毎日の移動手段を考える:SDGs12につながるサステナブルな選択
はじめに:当たり前の「移動」とSDGs12
私たちは毎日、通勤や通学、買い物やレジャーなど、様々な目的で移動をしています。この当たり前の行動である「移動」が、実は地球環境や社会、そしてSDGs(持続可能な開発目標)の目標12「つくる責任、つかう責任」と深く関わっていることをご存知でしょうか。
SDGs12は、持続可能な消費と生産のパターンを確保することを目指しています。私たちの移動手段の選択は、エネルギー消費、資源利用、そして大気汚染や気候変動といった環境問題に直接的な影響を与えます。また、どのような交通システムを「つかう」か、どのような車両が「つくられ」「使われ」「廃棄される」かという視点も、この目標に関連しています。
この記事では、毎日の移動手段を見直すことが、SDGs12の達成にどのように貢献できるのか、そして具体的にどのような行動が可能なのかを分かりやすくご紹介します。
移動が環境・社会に与える影響
現代社会の多くの移動は、ガソリンや軽油といった化石燃料を動力とする自動車に依存しています。これらの燃料の燃焼は、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスや、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)といった大気汚染物質を排出します。
- 気候変動への影響: CO2排出は地球温暖化の主な原因の一つであり、異常気象や海面上昇など、地球規模での気候変動を引き起こす要因となります。
- 大気汚染: NOxやPMは呼吸器系の疾患の原因となるなど、人々の健康に悪影響を与えます。特に都市部では深刻な問題となることがあります。
- 資源の消費: 車両の製造には鉄、アルミニウム、プラスチックなど様々な資源が必要です。また、道路や駐車場といった交通インフラの整備にも膨大な資源とエネルギーが使われます。
- 騒音・振動: 交通量の多い地域では、騒音や振動が生活環境を悪化させることがあります。
これらの影響は、私たちが「つかう」移動手段の種類や量によって大きく変わります。一人ひとりが移動手段を選択する責任を意識することが、持続可能な社会の実現につながります。
SDGs12と移動手段の責任あるつかい方
SDGs12の「つかう責任、つくる責任」という観点から、移動手段について考えてみましょう。
- つかう責任: どのような移動手段を選ぶか、そしてそれをどのように利用するかは、まさに「つかう責任」の実践です。環境負荷の低い移動手段を選び、無駄な移動を減らすことがこれにあたります。また、公共交通機関などの共有資源を大切に使うことも含まれます。
- つくる責任: 移動手段そのものを「つくる」側、すなわち自動車メーカーなどは、環境負荷の低い車両の開発・生産や、リサイクルしやすい設計を行う責任があります。しかし、「つかう」側である私たちも、環境性能に優れた製品を選ぶことや、長く大切に使うことで、「つくる責任」を果たす企業を間接的に応援することになります。
具体的な行動アイデア:サステナブルな移動のヒント
では、私たちの毎日の移動をよりサステナブルにするために、具体的にどのような行動ができるでしょうか。無理なく始められるアイデアをいくつかご紹介します。
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近距離移動は徒歩や自転車で:
- 「ちょっとそこまで」の移動を車に頼るのをやめ、徒歩や自転車に変えてみましょう。
- メリット:CO2排出ゼロ、健康増進、交通渋滞緩和、駐車スペース不要。
- ヒント:通勤・通学の一部を歩きや自転車にしてみる、買い物の距離を意識して移動手段を選ぶ、駐輪場や歩道の整備状況を確認する。
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公共交通機関を積極的に利用する:
- 電車やバスは、一度に多くの人を運ぶため、一人あたりのエネルギー消費やCO2排出量が自動車よりも大幅に少ない場合が多いです。
- メリット:環境負荷が低い、運転のストレスがない、移動中に他のことができる、交通インフラの効率的な利用。
- ヒント:自宅や職場の最寄り駅・バス停を確認する、公共交通機関でのアクセスが便利な場所を選ぶ、オフピーク通勤・通学を検討する(可能な場合)。
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カーシェアリングやライドシェアを活用する:
- 自家用車を持たなくても、必要な時にだけ車を利用できるサービスです。一台の車を複数人で共有することで、車両の生産台数や駐車スペースの無駄を減らせます。
- メリット:車の維持費や駐車場代がかからない、必要な時だけ利用できる、車両資源の効率的な利用。
- ヒント:利用したいサービスが生活圏にあるか調べる、利用目的(買い物、レジャーなど)に応じて適したプランを選ぶ。
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テレワークやオンライン会議を活用し、移動自体を減らす:
- 技術の進化により、自宅やオフィス以外の場所で仕事をする、対面せずに会議を行うことが可能になりました。これにより、通勤や出張といった移動を減らすことができます。
- メリット:移動時間・コストの削減、ワークライフバランスの向上、CO2排出の大幅削減。
- ヒント:勤務先がテレワーク制度を導入しているか確認する、会議の必要性を改めて検討しオンライン化を提案する、移動を伴う予定を立てる前にオンラインで代替できないか考える。
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やむを得ず車を使う場合は、エコドライブを心がける、環境性能の良い車を選ぶ:
- どうしても車が必要な場合でも、環境負荷を減らす工夫はできます。急発進・急ブレーキを避ける、アイドリングストップを心がけるといったエコドライブは燃費を向上させ、排出ガスを削減します。
- また、次に車を買い替える際には、燃費の良い車、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)など、環境性能に優れた車種を検討することも「つくる責任」を意識した選択と言えます。
- メリット:燃費向上、排出ガス削減、燃料費の節約、静音性(EV)。
- ヒント:エコドライブの基本を学ぶ、タイヤの空気圧を適切に保つ、不要な荷物を車から降ろす、次期購入候補車の環境性能を比較検討する。
行動の効果と実践のポイント
これらのサステナブルな移動へのシフトは、個人の健康や経済的なメリットだけでなく、地球環境や社会全体にも貢献します。小さな一歩でも、多くの人が実践することで、排出される温室効果ガスや大気汚染物質を削減し、より住みやすい都市環境を作り出すことにつながります。
実践を続けるためのポイントとしては、最初から完璧を目指すのではなく、まずは一つ、無理なく続けられそうな行動から始めてみることが大切です。例えば、「週に一度は自転車で買い物に行く」「天気が良い日は一駅分歩いてみる」など、小さな目標を設定すると良いでしょう。また、移動手段を変えることで節約できた燃料費や、増えた運動時間などを記録してみるのも、モチベーション維持に役立ちます。
まとめ
毎日の移動は、私たちの生活に欠かせないものですが、その選択が環境や社会に大きな影響を与えています。SDGs12「つかう責任、つくる責任」の視点を持つことで、徒歩や自転車、公共交通機関の利用、テレワークなど、様々なサステナブルな選択肢が見えてきます。
これらの行動は、地球温暖化の防止や大気汚染の改善に貢献するだけでなく、私たちの健康増進や生活の質の向上にもつながります。ぜひ、今日から一つでも、毎日の移動を見直す取り組みを始めてみてください。小さな一歩が、持続可能な未来への確かな道となります。