どこで、どのように? モノの背景を知る責任あるつかい方のヒント
はじめに
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」では、持続可能な生産消費形態を確保することを目指しています。この目標達成に向けて、私たち一人ひとりの「つかう責任」が非常に重要になります。日々の暮らしの中で、私たちは様々なモノを手にして使っていますが、そのモノが「どこで、どのように」作られたのか、その背景まで意識することはあまりないかもしれません。
しかし、モノの背景を知ることは、「つかう責任」をより深く理解し、より良い選択をするための大切な一歩となります。この記事では、なぜモノの背景を知ることが大切なのか、そしてどのようにすればその背景を知ることができるのか、具体的なヒントをご紹介します。
なぜモノの背景を知ることが「つかう責任」につながるのか
私たちが購入し、利用するモノは、様々な資源を使って作られ、多くの人々の手を経て届けられています。その製造プロセスや流通過程で、環境に負荷がかかったり、関わる人々の労働環境に課題があったりする場合があります。
SDGs12は、「つくる責任」を持つ企業だけでなく、「つかう責任」を持つ消費者にも、持続可能性を考慮した選択を求めています。消費者がモノの背景に関心を持ち、情報を基に製品を選ぶことは、企業に対し、より環境や社会に配慮した「つくる責任」を果たすよう促す力となります。
- 環境への影響: どのような素材が使われ、どれくらいのエネルギーや水が消費され、どんな廃棄物が出るのか。環境負荷の低い方法で作られた製品を選ぶことは、間接的に環境保護に貢献します。
- 社会への影響: 製品を作る過程で、関わる人々の労働条件は適正か、児童労働や強制労働はないか。公正な取引(フェアトレードなど)が行われているか。こうした社会的な側面に配慮した製品を選ぶことは、より公平で持続可能な社会の実現につながります。
モノの背景を知ろうとすることは、単に知識を増やすだけでなく、自分の消費行動が世界とどのようにつながっているのかを理解し、より意識的な選択をするための基盤となります。
モノの背景を知るための具体的なヒント
では、日々の生活の中で、どのようにモノの背景を知ることができるのでしょうか。全てを調べる必要はありません。まずは、関心のある製品や分野から、できる範囲で試してみてはいかがでしょうか。
1. 製品のラベルやパッケージを見てみる
製品のラベルには、素材、原産国、製造者などが記載されている場合があります。また、環境認証マークやフェアトレード認証マークなどが表示されていることもあります。これらの情報を手がかりに、製品がどのような特徴を持っているのかを知ることができます。
- 例:「FSC認証マーク」が表示されていれば、適切に管理された森林の木材を使用していることが分かります。
- 例:特定のオーガニック認証マークがあれば、化学肥料や農薬の使用を抑えて生産された素材を使っていることが推測できます。
2. 企業のウェブサイトやCSRレポートを調べる
多くの企業は、自社のウェブサイトやCSR(企業の社会的責任)レポート、統合報告書などで、製品の製造過程、使用している素材の調達方法、労働環境への配慮、環境負荷低減の取り組みなどに関する情報を公開しています。企業の理念や具体的なアクションを知る上で、非常に有効な情報源となります。
3. 認証マークの意味を理解する
製品に表示されている様々な認証マーク(例:エコマーク、GOTS認証、レインフォレスト・アライアンス認証など)は、その製品が特定の環境的・社会的な基準を満たしていることを示しています。これらのマークがそれぞれどのような基準に基づいているのかを少しずつ学んでいくと、製品選びの際に役立ちます。
4. ニュースや関連情報をチェックする
特定の製品や産業(例えば、衣料品、食品、電化製品など)に関する製造背景やサプライチェーンの課題は、ニュースや専門の記事などで報じられることがあります。関心のある分野の情報を追ってみることで、業界全体の動向や個別の企業の取り組みについて学ぶことができます。
5. イベントや展示会に参加する(オンライン含む)
SDGsやサステナビリティをテーマにしたイベントや展示会では、企業の取り組みや製品の背景に関する情報を直接得られる機会があります。オンラインで開催されるものも増えていますので、気軽に参加してみるのも良いでしょう。
実践する上でのポイント
- 完璧を目指さない: 全ての製品の背景を完璧に知ることは現実的ではありません。まずは一つの分野や、特に気になる製品から調べてみるなど、できる範囲から始めましょう。
- グリーンウォッシュに注意: 企業が環境に配慮しているように見せかける「グリーンウォッシュ」も存在します。一つの情報源だけでなく、複数の情報や認証マークなどを参考に、批判的な視点を持つことも大切です。
- 知ったことを行動につなげる: モノの背景を知ることは目的ではなく、より責任ある消費行動を選ぶための手段です。知ったことを基に、購入する製品を選んだり、企業にフィードバックを送ったりするなど、次の行動につなげていきましょう。
行動の効果と広がり
私たち一人ひとりがモノの背景に関心を持ち、それに基づいて製品を選ぶことは、小さな行動のように思えるかもしれません。しかし、そうした消費者の意識や行動の変化は、市場全体に影響を与え、企業が持続可能な生産方法へと転換していくための大きな原動力となります。
あなたの「知りたい」という一歩が、「つくる責任」を果たす企業の製品を選び、そうでない企業に改善を促すシグナルとなり、結果として環境負荷の低減や社会課題の解決に貢献できる可能性を秘めています。
まとめ
SDGs12の達成には、「つかう責任」と「つくる責任」の両方が不可欠です。モノがどこでどのように作られたのか、その背景を知ろうとすることは、「つかう責任」を果たす上で非常に重要なステップです。
製品ラベル、企業のウェブサイト、認証マーク、ニュースなどを活用して、身近なモノの背景に少しだけ目を向けてみてください。完璧を目指す必要はありません。あなたの小さな curiosity(好奇心)が、より良い社会と環境への貢献につながる第一歩となるでしょう。日々の選択に、モノのストーリーを加えてみませんか。